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国連が推奨する子育てプログラム「トリプルP」とは?

執筆者の写真: cocohaplabococohaplabo



Triple P(Positive Parenting Program)は、オーストラリアのクイーンズランド大学で開発されたプログラム。


「前向き(Positive)」「子育て(Parenting)」「プログラム(Program)」の頭文字をとって「Triple P(トリプルピー)」。今回は、Triple Pが開発されるまでのお話から、Triple Pを導入することによる効果まで紹介していきます。


Triple Pが開発されるまで


前向き子育てプログラム「Triple P(トリプルP)」は、オーストラリアのクイーンズランド大学で開発されました。

30年以上前、心理士であるマシューサンダース教授(のちのTriple Pの開発者)は、ある家族の相談にあたっていました。そこで、サンダース教授は、ある少年が母親の顔をめがけておもちゃのプラスチック製の芝刈り機を振り回したときの、母親の傷つき当惑した表情を見て、個々の家族の手助けをする以上の、何かを行う必要があることを実感しました。多くの親が、情報を十分に得られないまま子育てをしているのではないかと考え、愕然としたそうです。

その後、サンダース教授と、オーストラリアにあるクイーンズランド大学のParenting and Family Support Centreのメンバーは、個々の家族だけではなく、多数の親を支援するプログラムを開発しました。そのプログラムこそがTriple Pです。


参考:




すべての親にエビデンスに基づく情報を効率的に届ける仕組み

実は、Triple Pには5つのレベルがあります。プログラムが届けられる範囲の広さと、介入の強度によってレベルが分けられています(図を参照してください)。


トリプルPの5つの介入レベル
トリプルPの5つの介入レベル

レベルが高くなるほど、支援の強度(内容の量や頻度)が高くなり、届けられる範囲は集中的になります。


レベル1は、すべての親に向けてメディアを使った子育てキャンペーンを行うことを指すのに対し、レベル5は、より個別的な支援を必要とする保護者に対して長期間にわたって行われます。


このように多くのレベルを用意しているのは、より多くの親に効率的にプログラムを届けるためです。Triple Pには「最小限に充足した支援」という考え方があり、「それぞれの人に必要最小限な支援を届けることで、すべての親に効率的にエビデンスに基づく子育てプログラムを届ける」という考え方を採用しています。


個別での長期間にわたる子育て支援は、保護者が子育てに対してとても難しさを感じておられるときには有効ですが、これを行うには、時間的にも経済的にもコストがかかります。このレベルをすべての家庭に提供しようとすると、それだけ時間がかかってしまい、他に、支援を必要としている方へ必要なタイミングで支援を届けることができなくなる可能性があります。


反対に、保護者のなかには、「現時点ではそこまで子育てに難しさは感じていないけれど、子育てに関する正しい知識を身につけたい」という方もいらっしゃいます。そのような方には、レベル5のような個別での支援は必要なく、たとえばレベル1やレベル2(セミナーの形式で子育て情報を端的に伝える)の支援で充分であり、そのほうがニーズにマッチしていると考えられます。


このように、それぞれの家庭のニーズに合わせてプログラムを調整できるようにTriple Pはデザインされています。



多段階の介入システムを採用する効果


上記のような多段階の介入システムを採用することによる効果を調べた研究があります。Printzら(2009)によってアメリカで行われた研究で、18の郡が無作為に選ばれ、通常の子育て支援を受ける郡とTriple Pシステムを受ける郡に割り当てられました。Triple Pシステムを受けた郡では、通常の地域のサービスを続けていた郡(コントロール郡)と比較して、下記のような結果が見られました:

  1.家庭外保護措置を受ける子どもの割合が21%低かった

  2.子ども虐待による傷害により入院または緊急外来を受診した割合が13%低かった

  3.子ども虐待の件数が31%低くなった

このように、Triple Pでは、導入した郡単位で児童虐待の予防に関連する効果が認められています。


参考:

Prinz RJ, Sanders MR, Shapiro CJ, Whitaker DJ, Lutzker JR. Population-based prevention of child maltreatment: the U.S. Triple p system population trial. Prev Sci. 2009 Mar;10(1):1-12. doi: 10.1007/s11121-009-0123-3. Erratum in: Prev Sci. 2015 Jan;16(1):168. doi: 10.1007/s11121-014-0538-3. PMID: 19160053; PMCID: PMC4258219.


ここまで読んでくださりありがとうございました!




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